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TEEで見る僧帽弁逆流症 その10 [TEE]

b.僧帽弁形成術後溶血
 逆流面積が2cm2以下の症例でも人工物(人工弁輪,人工腱索等)によって逆流の方向が変わり溶血を認める場合は,再修復が必要となる.
 本症例では人工弁輪へ逆流が当たり逆流方向の変化を認める.人工心肺離脱後も溶血が改善しないため再形成術となった.


c.SAM(僧帽弁前尖収縮期前方運動)
 SAMが発症した場合,①容量負荷②強心薬の減量または中止③血管収縮薬の投与④β遮断薬の投与を行う.僧帽弁形成術後のSAMは手術中の発症がもっとも頻度が高く,術後遠隔期の発症は術中と比較して非常に少ないとされている.従って人工心肺離脱時のSAMの診断,治療は再修復術を回避するためにも非常に重要である.SAMは,①小さめの人工弁輪装着②拡大のない左室③長い後尖(前尖/後尖<1.5)で発症しやすいとされている.そのような症例では人工心肺離脱時における前負荷の設定,強心薬の使用に注意が必要となる.
 本viewで僧帽弁前尖の前方運動,それに伴う左室流出路狭窄,僧帽弁逆流を認める.
容量負荷,強心薬を中止したが改善しなかったため,β遮断薬を使用した.SAMは消失し手術も終了,その後は遠隔期を含めSAMの発症を認めていない.



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TEEで見る僧帽弁逆流症 その9 [TEE]

5. 僧帽弁形成術後の注意点
 僧帽弁形成術では,水負荷試験等を行い弁逆流の有無を確認しながら手術を進める.しかし心停止下に評価を行うため,僧帽弁逆流が消失してもその評価は拡張期のものであるところに限界があり,形成術の成否は心拍動下にTEEを用いて判断する.形成術後,遺残逆流が観察される場合には①逆流の程度②逆流の方向③心周期のどの時期か④逆流の発生部位⑤僧帽弁前尖収縮期前方運動(SAM)の有無を確認する.一般的には逆流面積が2cm2を超え,汎収縮期逆流を認める場合に再修復または僧帽弁置換術を行う.

a. 僧帽弁逆流の残存
ME four chamber view
 前尖(A2)に立てた人工腱索が外れ,前尖と後尖のcoaptaionが悪化,逆流を認める.




ME AV LAX view
 本viewでもcoaptation悪化部位からの逆流を認める.本症例では人工腱索を修正して手術を終了,僧帽弁逆流は消失した.

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TEEで見る僧帽弁逆流症 その8 [TEE]

4. 僧帽弁弁輪拡大
 僧帽弁の弁輪が拡大することにより弁尖のcoaptationが悪化し僧帽弁逆流症を生じる.僧帽弁輪拡大が単独で生じることは少なく,左室拡大に伴うことが多い.左室拡大に伴う僧帽弁逆流症はtetheringを主因とすることが多い.左室拡大を伴わない弁輪拡大は孤立性心房細動に認めることが多い.手術はcoaptationを改善するために弁輪形成術を行う.
TEE 大阪1-16.jpg




ME four chamber view
 弁輪拡大に伴い前尖と後尖のcoaptationが悪化している.prolapse(左房方向への弁尖の変位)もなくtethering(左室方向への弁尖の変位)の所見も認めない.カラードップラーで偏向性がない逆流を認める.


TEE 大阪1-7.jpg






ME AV LAX view
 coaptationの悪化,逆流を認める.


TEE 大阪のコピー.jpg





3D TEE
 前尖,後尖のcoaptation悪化を認める.



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TEEで見る僧帽弁逆流症 その7 [TEE]

g.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (A3 prolapse)
TEE 大阪1.jpg



ME mitral commissural view
ME AV LAX view
 前尖medial側(A3)の逸脱を認める.また逸脱部位と反対方向へ逆流を認める.
ME AV LAX viewからプローベを右に振るとA3が描出される.本viewでもA3の逸脱を認める.




3D TEE
TEE 大阪2.jpg






 本viewでA3の逸脱を認める.

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TEEで見る僧帽弁逆流症 その6 [TEE]

f.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (A2 prolapse)
TEE 大阪1-16.jpg





ME four chamber view
 A2の逸脱を認める.カラードップラーでは逸脱部位から反対方向に向かう逆流を認める.




TEE 大阪1-6.jpg





ME mitral commissural view
 A2の逸脱を認める.カラードップラーでは逆流はA2からP2方向(本viewではtangent方向)に認める.




TEE 大阪1-7.jpg






ME AV LAX view
 A2の逸脱,カラードップラーで逸脱と反対方向への逆流を認める.





TEE 大阪2.jpg





3D TEE
 A2を中心に広範な逸脱を認める.

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TEEで見る僧帽弁逆流症 その5 [TEE]

e.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (A1 prolapse)
TEE 大阪 - コピー.jpg





ME four chamber view
 A1を観察するためにfour chamber viewを浅めに描出(five chamber view)する.本viewではIEによるA1の逸脱を認める.カラードップラーでは逸脱部位から反対方向に向かう逆流を認める.




TEE 大阪1-6.jpg





ME mitral commissural view
 前尖lateral側の逸脱を認める.カラードップラーでは前尖外側(A1)からP3に向かう逆流を認める.




TEE 大阪 提出.jpg






ME AV LAX view
 ME AV LAX viewを描出した後,プローベを左に回す(外側方向へ振る).本viewでA1の逸脱を観察できる.



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TEEで見る僧帽弁逆流症 その4 [TEE]

d.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (P3 prolapse)
TEE 大阪1-6.jpg




ME mitral commissural view
 P3の評価は主にME mitral commissural viewで行う.Bモードで逸脱部位,腱索の断裂,延長を診断する.カラードップラーモードでは逸脱部位に一致してaliasingを観察することができる.本viewでは腱索断裂に伴うP3の逸脱,カラードップラーでP3に一致したaliasing,前尖方向への逆流を認める.




TEE 大阪2.jpg





3D TEE
P3(矢印)部分の逸脱を認める.

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TEEで見る僧帽弁逆流症 その3 [TEE]

c.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (P2 prolapse)
TEE 大阪1-16.jpg




ME four chamber view
前述したように僧帽弁の逸脱部位はP2が最も多い.
本viewではP2の逸脱を認める.カラードップラーモードで逸脱部位から反対方向へ向かう逆流を確認できる.




TEE 大阪1-6.jpg





ME mitral commissural view
P2部分が逸脱している.カラードップラーモードで逸脱部位から反対方向,本viewではtangent方向に向かう逆流が観察される.




TEE 大阪1-7.jpg





ME AV LAX view
P2部分の逸脱を認める.逸脱部位から反対方向へ,本viewではP2からA2方向への逆流が観察される.



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TEEで見る僧帽弁逆流症 その2 [TEE]

3. 僧帽弁逸脱症
 僧帽弁弁下組織の乳頭筋,腱索が断裂,延長することによって僧帽弁は左房方向に逸脱し,僧帽弁逆流症が発症する.逆流ジェットは逸脱部位と反対方向に進行する.
 
a.僧帽弁逸脱症に対する手術
 一般的に前尖の逸脱に対しては人工腱索による腱索再建,後尖の逸脱に対しては四角切除または三角切除,commisure部位の逸脱に対してはKay法(交連部縫縮術)が行われる.一方,僧帽弁逸脱症は病態が多岐に及ぶため所見次第で後尖に対して人工腱索を立てる,前尖逸脱に後尖の腱索を移植する,または前尖・後尖の弁縁を縫合する(edge-to-edge repair)など多様な手術が行われる.僧帽弁,弁下組織の修復の後に弁輪形成術が行われる.弁輪形成術は僧帽弁弁尖の接合部を増やすだけでなく,弁下組織への負担を軽減する役割も担っている.

b.TEEでみる僧帽弁逸脱症 (P1 prolapse)
TEE 大阪1-12.jpg
 腱索断裂の部位はP2が最も多く,P1は最も逸脱が起こりにくいとされている.またTEEはposteromedial側から心臓を観察するため,P3側と比較してP1側の情報量は少ない.



 ME four chamber viewでlateral側を観測するためにはいわゆるfive chamber viewまでプローベを引く.本viewではP1からA1方向に偏向性を持った逆流が生じている.


TEE 大阪1-13.jpg






 Five chamber viewから走査面を回転しさらにA1・P1の接合部位を確認する.本viewでもP1からA1方向へ偏向性を持った逆流が観察できる.


TEE 大阪2のコピー.jpg






 3DTEEでは画像処理によってsurgeon viewと同じviewを描出することが可能である.2DTEEとは鏡面像の配置になる.本viewではP1部分の逸脱を認める.

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TEEで見る僧帽弁逆流症 その1 [TEE]

1. 僧帽弁の解剖
TEE 大阪のコピー.jpg
 僧帽弁は2葉の弁(前尖,後尖),腱索,乳頭筋(前乳頭筋,後乳頭筋)からなる.前尖は僧帽弁弁口面積の60%を構成し,後尖,交連部がそれぞれ35%,5%を構成している.一方,弁周囲は60%が後尖,40%が前尖からなる.僧帽弁の分類方法にはCarpentierの分類とDuranの分類があるが,ASC/SCAガイドラインではCarpentierの分類が使用されている(図).

2. 僧帽弁の描出
主に以下のa,b,cのviewで病変部位を特定し,dのviewで確認,eで弁下組織の観察を行う.
TEE 大阪1-5.jpg
a.ME four chamber view
 走査面は0°,mid esophageal レベルで描出される.
プローベを進める(advance)に従い,lateral側の描出からmedial側の描出に移行する.そのため,他のviewと組み合わせて病変部位を確定する必要がある.







TEE 大阪1-6.jpg
b.ME mitral commissural view
 プローベの位置はfour chamber viewのまま,走査面のみ40-70°回転する.
僧帽弁の前尖,後尖と腱索,乳頭筋の関係が確認しやすい.








TEE 大阪1-7.jpg
c.ME AV LAX view
 Mitral commissural viewからさらに60-90°走査面を回転する.僧帽弁前尖,後尖のcoaptationの確認に用いる.左右にプローベを振ることによってmedial側,lateral側の確認も可能である.







c.TG basal SAX view
 左室短軸像を描出した後,プローベを引き描出する.a,b,cのviewから特定した僧帽弁の病変部位を確認する.viewが得られないことも多い.



e.TG two chamber view
 TG mid SAXを描出し,走査面を90°回転する.弁と弁下組織(腱索,乳頭筋)の関係を確認する.


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