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僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的修復と手術の比較 [抄読会]

Percutaneous repair or surgery for mitral regurgitation.

【背景】
 逆流ジェットの起始部にある弁尖の辺縁をクリップで合わせる現在試験段階の経皮的手技によって,僧帽弁の修復が得られる可能性がある.

【方法】
 中等症以上(グレード 3+または 4+)の僧帽弁閉鎖不全症患者 279 例を,経皮的修復を行う群と,従来の僧帽弁形成術または僧帽弁置換術を行う群のいずれかに,2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要複合エンドポイントは,12 ヵ月の時点で死亡していないこと,僧帽弁機能不全に対する手術が行われていないこと,グレード 3+または 4+の僧帽弁閉鎖不全症がみられないこととした.安全性の主要エンドポイントは,30 日以内の重大な有害事象の複合とした.

【結果】
 12 ヵ月の時点で,有効性の主要エンドポイントの発生率は,経皮的修復群 55%,手術群 73%であった(p=0.007).主要エンドポイントの発生率は,死亡は両群ともに 6%であった.僧帽弁機能不全に対する手術は経皮的修復群 20%に対し手術群 2%,グレード 3+または 4+の僧帽弁閉鎖不全症は経皮的修復群 21%に対し手術群 20%であった.30 日の時点での重大な有害事象の発生率は,経皮的修復群 15%,手術群 48%であった(p<0.001).12 ヵ月の時点で,両群とも左室の大きさ,NYHA分類,QOL 指標が,術前と比較して改善していた.

【結論】
 僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的修復は,従来手術と比較して症状の軽減は少なかったが,より安全性に優れ,臨床転帰は同程度にであった.

【解説】
 今回の検討では経皮的修復術が僧房弁形成術または置換術と同程度の臨床転帰を得ることができたとしている.しかし,僧房弁逆流症は僧房弁が弁葉だけでなく弁下組織まで含めた僧房弁複合体の疾患であり,僧房弁複合体を理解することによって治療も発展してきた.その視点から考えると今回の経皮的修復術は適応が限定されるものと思われる.

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