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高リスク症例における麻酔深度モニターの精度 [抄読会]

Prevention of Intraoperative Awareness in a High-Risk Surgical Population

【背景】
 術中覚醒は,周術期合併症のリスクが高い患者の 1%近くに発生する.覚醒の予防には,標準的な呼気終末麻酔薬濃度(MAC)モニタリングを行うプロトコールよりも,脳波から求めるバイスペクトラルインデックス(BIS)を用いるプロトコールのほうが優れているという仮説を検証した.

【方法】
 前向き無作為化単盲検試験として覚醒のリスクが高い症例(図1) 3施設6,041 例を,BIS を指標とした麻酔を行う群(40 < BIS < 60)または,MAC を指標とした麻酔を行う群(0.7 < age-adjusted MAC < 1.3)に無作為に割り付けた.プロトコールには,警報に加えて,計画的教育とチェックリストが含まれた.Fisher の正確確率検定の片側検定を用いて,BIS プロトコールの優越性を検討した.

【結果】
 術後に面接を行った患者で明確な術中覚醒が生じたのは,BIS 群では 2,861 例中 7 例(0.24%)に対し,MAC 群では 2,852 例中 2 例(0.07%)であり(差 0.17 パーセントポイント,95% CI -0.03 - 0.38,p=0.98) ,BIS プロトコールの優越性は示されなかった.明確な術中覚醒が生じたかまたはその疑いがあったのは,BIS 群 19 例(0.66%)に対し MAC 群 8 例(0.28%)であり(差 0.38 パーセントポイント,95% CI 0.03 - 0.74,p=0.99),この場合も BIS を用いたプロトコールの優越性は示されなかった.麻酔薬の投与量と術後主要有害イベントの発生率に差を認めなかった.

【結論】
 BIS プロトコールの優越性は確立されなかった.覚醒をきたした患者は MAC 群のほうが BIS 群より少なかった.

【解説】
 心臓血管手術症例を始めとする術中覚醒のハイリスク症例では麻酔深度モニターとしてBISの精度はMACと同程度の精度であった.現在,心臓血管手術においては近赤外線モニターが優先され,麻酔深度モニターが行われない(行いにくい)症例も多い.しかし心臓血管麻酔が術中覚醒のリスクを高めること,静脈麻酔を中心とした麻酔法が選択されやすいことから今後心臓血管麻酔時のBISの重要性は高まるものと思われる.

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