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強化血糖降下療法が長期の心血管系転帰に及ぼす影響 [抄読会]

Long-Term Effects of Intensive Glucose Lowering on Cardiovascular Outcomes; The ACCORD Study

【背景】
 2 型糖尿病に罹患し,心血管疾患系リスクの高い患者に強化血糖降下療法を行うと,死亡率が上昇することが明らかになっている.今回,平均 3.7 年間行った強化血糖降下療法の死亡率と主要心血管系イベントに関する 長期(5年)転帰について報告する.

【方法】
 2 型糖尿病で心血管疾患系の危険因子を持つ患者を,強化療法群(目標HbA1C < 6.0%)と,標準療法群(7.0% < 目標HbA1C < 7.9%)のいずれかに無作為に割り付けた.強化療法群の死亡率が高かったため,強化療法中止後はすべての参加者の目標HbA1C値を 7.0% - 7.9%とし,試験終了時まで追跡した.

【結果】
 強化療法の中止前には,主要転帰(非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管系の原因による死亡の複合割合)の発生率に強化療法群と標準療法群の間で有意差は認められなかった(p=0.13).しかし,強化療法群で全死因死亡(主に心血管系)が多く(HR 1.21,95%CI 1.02 - 1.44),非致死的心筋梗塞が少なかった(HR 0.79,95%CI 0.66 - 0.95).これらの傾向は全追跡期間を通して認められた(死亡のHR 1.19,95%CI 1.03 - 1.38,非致死的心筋梗塞のHR 0.82,95%CI 0.70 - 0.96).強化療法中止後は,強化療法群のHbA1C値の中央値が 6.4%から 7.2%に上昇し,血糖降下薬の使用と,重度の低血糖およびその他の有害事象の発現率は,両群で同程度であった.

【結論】
 HbA1C < 6%を目標とした 3.7 年間の強化療法によって,標準療法に比べ非致死的心筋梗塞の 5 年発生率は減少したが,5 年死亡率は上昇した. 2 型糖尿病に罹患した心血管系リスクの高い患者に対しては,このような強化血糖降下療法は推奨されない.

【解説】
 ICU患者を対象としたNICE-SUGAR Studyを始めとして強化血糖療法に否定的な結果が相次いでいる.本研究は心血管系リスクの高い症例を対象にHbA1C値を指標として管理を行い,近年の結果と同様の結果を得ている.原因としては低血糖の発生などが考えられる.現時点では特に糖尿病患者において血糖値<180mg/dl,7.0%< HbA1C< 7.9%で管理することが推奨される.
 
 

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