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左冠動脈主幹部病変に対するPCIとCABGの比較 [抄読会]

Percutaneous Coronary Intervention Versus Coronary Artery Bypass Graft Surgery in Left Main Coronary Artery Disease: A Meta-Analysis of Randomized Clinical Data

【目的】
 本研究は左冠動脈主幹部(LMT)病変を有する患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の安全性と有効性を冠動脈バイパス術(CABG)の場合との比較を目的とする.
【背景】
 LMT病変に対してPCIとCABGを比較したこれまでのメタアナリシスは、主に前向き研究ではない観察研究を対象としていた.一方で近年いくつかの新しいRCTが報告されている.
【方法】
 4件の無作為化臨床試験に含まれた1,611例を、今回のメタアナリシスの対象とした.主要評価項目は,主要心脳血管イベント(MACCE),具体的には死亡,心筋梗塞(MI),再血行再建術(TVR),または脳卒中の1年発症率とした.
【結果】
 PCI群ではCABG群に比べ、MACCEの1年発症率が有意ではなかったものの高かったが(14.5% vs 11.8%,OR:1.28,95%CI:0.95 - 1.72、p=0.11)、これは主にTVRの増加(11.4% vs 5.4%,OR:2.25,95%CI:1.54~3.29,p<0.001)によるものであった.これに対して脳卒中の発生率はPCI群の方が低かった(0.1% 対 1.7%,OR:0.15,95%CI:0.03~0.67,p=0.013).死亡(3.0% vs 4.1%,OR:0.74,95%CI:0.43 - 1.29,p=0.29)およびMI(2.8% vs 2.9%,OR:0.98,95%CI:0.54~1.78,p=0.95)には有意差を認めなかった.
【結論】
 LMT病変を有する患者に対するPCIはCABGを施行した場合と比較してMACCE,死亡,そしてMIの1年発症率に有意差を認めず,脳卒中のリスクは低下したが,TVRのリスクは上昇した.

【解説】
 SYNTAX trialによってLMT病変,3枝病変に対するCABGのPCIの優位性が示されて以降,本邦においても減少し続けたCABG症例が漸増している(2008年).本研究はLMT病変のみを対象としており, 心血管系イベントの1年発症率に差を認めなかった.しかしCABGのPCIに対する優位性は期間,重症度(SYNTAX score)に比例すると考えられることからさらなる長期の成績が待たれる.

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