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心房細動症例におけるダビガトランとワルファリンの比較 [抄読会]

Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation (RE-LY trial)

【背景】
 心房細動症例において抗凝固療法の第一選択薬はワルファリンである.一方,ワルファリンは出血リスクやPT-INRによる凝固能の厳密な管理が必要など問題点も多い.本研究では新規の抗凝固薬であるダビガトランの脳卒中予防効果をワルファリンと比較した.

【方法】
 日本を含む44ヵ国951施設,18113例を対象とした.6ヵ月以内に心電図でAFを確診され,脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往,LVEF<40%,NYHA分類≧II,6ヵ月以内の心不全の既往,75歳以上(糖尿病,高血圧,冠動脈疾患患者は65歳以上)のうち一つ以上のリスクファクターを有する症例を対象とした.症例をダビガトラン110mg×2/日,ダビガトラン150mg×2/日,ワルファリン PT-INR 2-3でcontrolの3群に分け,脳卒中,全身性塞栓症,大出血について比較検討を行った.

【結果】
 主要転帰の発生率は,ワルファリン群 1.69%/年であったのに対し,ダビガトラン 110 mg 群 1.53%/年(RR 0.91,95%CI 0.74 - 1.11, p<0.001),ダビガトラン 150 mg 群 1.11%/年 (RR 0.66,95% CI 0.53 - 0.82,p<0.001)であった.大出血の発生率は,ワルファリン群 3.36%/年であったのに対し,ダビガトラン 110 mg 群 2.71%/年 (p=0.003),ダビガトラン 150 mg 群 3.11%/年 (p=0.31)であった.脳出血の発生率は,ワルファリン群 0.38%/年であったのに対し,ダビガトラン 110 mg 群 0.12%/年 (p<0.001),ダビガトラン 150 mg 群 0.10%/年(p<0.001)であった.死亡率は,ワルファリン群 4.13%/年であったのに対し,ダビガトラン 110 mg 群 3.75%/年(p=0.13),ダビガトラン 150 mg 群 3.64%/年(p=0.051)であった.

【結論】
 心房細動(AF)患者において,ダビガトラン 110mgの脳卒中および全身性塞栓症予防効果はワルファリンに対し非劣性を示し,大出血は少なかった。同150mgはワルファリンに比し,脳卒中および全身性塞栓症を有意に抑制した。大出血発生率は同等であった。

【解説】
 ダビガトランは血液凝固カスケードの下流にあるトロンビンを可逆的に阻害する直接トロンビン阻害剤である.治療域が広く,血中モニタリングの必要性がないこと肝臓の薬物代謝酵素の影響をにくいという特徴を持ち,本邦でも本年3月に発売された.周術期においても新規に発症する心房細動が問題となっているが,出血,凝固モニタリングなどがハードルとなってワルファリンの使用を躊躇する場面も多い.一方,ダビガトランにも出血の危険性はあり,腎機能障害症例では使用量の減量が必要などの注意点はあるが,本薬剤の登場によって周術期心房細動に対する抗凝固療法が変化していく可能性がある.


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