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大量出血・大量輸血 [抄読会]

Transfusion management of trauma patients.

 外傷による早期死亡の原因として最も多いのは頭部外傷であるが,それに続く原因が出血性ショックである.出血性ショックでは大量輸血を必要とするが,多くの症例で凝固能異常からDICに進展する.本稿では近年行われている凝固・止血能に配慮した輸血管理について概説する.

1. 大量輸血
 いくつかの定義が提唱されているが,一般的に24時間以内に4500mL由来の輸血を行うこと,または循環血液量を超える量の輸血を行うことを大量輸血という.

2. 外傷後の凝固能異常
 外傷後の凝固能異常の原因は凝固因子の消費,大量輸血による凝固因子の希釈,アシドーシス,低体温である.

3. 大量輸血時の注意点
a.晶質液の制限
 出血性ショック時には晶質液の使用を制限し早期から膠質液を使用する.輸液過剰はAbdominal compartment syndromeをはじめとした合併症を起こしやすい.血圧維持には血管収縮薬の使用も考慮する.

b.赤血球製剤の機能低下
 濃厚赤血球の保存中に2,3-DPGは直線的に減少し2週間で0になり,輸血後2,3-DPGが回復するには24時間以上が必要となる.このため輸血直後の酸素解離曲線は左方移動し,ヘモグロビンが組織で酸素を離しにくくなっている.さらに赤血球の形態変化能も低下しているため微小循環における酸素運搬能も低下している.このため濃厚赤血球の補充ほど酸素運搬能は改善しない.また保存期間の長い濃厚赤血球の使用により予後が悪化する.以上の理由から過剰な濃厚赤血球の使用は控える.

c.緊急輸血時の対応
 血液型の検査が間に合わない場合はO型の濃厚赤血球,AB型の新鮮凍結血漿を使用する.但し妊娠可能な年齢の女性にはRHマイナスの血液を使用する.このため血液型検査は病院到着後できるだけ早く行う.

4. 大量輸血プロトコール
 出血性ショックに際し各医療機関ごとに大量輸血プロトコールが運用されている.以前は酸素運搬能の維持が主たる目的であったが現在は凝固能異常,血小板減少の予防に重点がおかれたプロトコールとなっている.濃厚赤血球 : 新鮮凍結血漿 : 濃厚血小板=1:1:1での投与が推奨され,大量輸血プロトコールもこの組成に準じた構成となっている.

 外傷患者に対する輸血は凝固・止血能の維持に重点を置いた管理によって良好な成績が得られている.今後も症例を重ねることによってこの輸血管理がbrush upされることが期待される.
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