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PBLD 大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術 その1 [PBLD]

【症例】
 75歳の女性。身長150 cm、体重50kg。数年前より易疲労感を自覚していたが、1か月前より労作時呼吸困難が出現し、大動脈弁狭窄症と診断された。心エコー検査では左室駆出率41%、大動脈弁収縮期最大圧較差85 mmHg,弁口面積0.5cm2であり,心筋壁はIVS20mm,PW19mmであった.また,E波52cm/s,A波78cm/s,E/A 0.7,E波減衰時間は310msecであった.冠動脈造影を施行したところ左冠動脈主幹部が通常より短いものの有意狭窄は認めなかった.高血圧,高脂血症のため内服加療を行っている.

【問題1】
 大動脈弁狭窄症に関して正しいものは?
1. 大動脈弁狭窄症は減少傾向にある.
2. 原因としては加齢に伴うものが最も多い.
3. 症状発現後も予後は比較的良好である.
4. 無症候性の大動脈弁狭窄症に手術適応はない.
5. 大動脈弁狭窄症では実際の心収縮能よりも左室駆出率は高値を示す傾向がある.

【解説】
1. 我が国における心臓・胸部外科手術は年間50000例程度行われている.最も多いのは冠動脈バイパス術ですが,カテーテル治療の普及により漸減傾向にある.増加しているのは胸部大動脈手術,大動脈弁手術であり,胸部大動脈手術は9000例,大動脈弁手術は15000例が行われている(日本胸部外科学会 2006).

2. 原因として以前はリウマチ性が最も多かったが,現在では加齢変性が51%で最も多く,次いで先天性大動脈ニ尖弁(36%),リウマチ性は9%となっている1)

3. 大動脈弁狭窄症は症状がない時期には突然死の可能性は高くないものの自覚症状出現後の予後は不良である.狭心症症状出現後の平均余命は5年,心身発作出現後はの平均余命は3年,心不全出現後は2年の平均余命である1)

4. 大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換症の推奨は下図のようになっている.無症候性の大動脈弁狭窄症に対しては高齢者に対する外科手術のリスク,若年者に対しては人工弁の遠隔期の合併症,年1%で発症する突然死の可能性を考慮に入れる必要がある.その一方で外科手術を行わずに症状が見られない症例は半分以下であること,症状が見られない間も不可逆的に心筋障害は進行することから正常な左室機能,無症候性の高度大動脈弁狭窄症症例に対しても早期の治療を好む方向に変化している.

5. 一般的に大動脈弁狭窄症は拡張能は障害されているものの収縮能は維持されている.しかし,afterload mismatchと呼ばれる状態,すなわち急速な圧負荷に対して左室肥大が追従できずに収縮力(左室駆出率)が低下する症例がしばしば見受けられる.このような症例は圧解除である大動脈弁置換術が唯一の治療法となる.

PBLD 2010.jpg

【正解】 2

【参考文献】
1) 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン (JCS 2007)
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