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大動脈二尖弁が大血管に与える影響 [抄読会]

Incidence of aortic complications in patients with bicuspid aortic valves.

【背景】
 大動脈二尖弁(BAV)患者では,大動脈関連合併症の発生率が高いとされている.

【方法】
 ミネソタ州オルムステッド郡に居住しているBAV患者を対象に大動脈関連合併症の包括的評価を行った.1980 - 1999年の期間に心エコー検査でBAVと診断されたオルムステッド郡の全住民コホートの追跡結果を解析し,大動脈関連合併症について検討した.追跡は2008 - 2009年まで行われた.主要転帰評価項目は,胸部大動脈解離,上行大動脈瘤,大動脈手術とした.

【結果】
 心エコー検査でBAVと確定診断された連続症例416例を対象とした.平均追跡期間は16年であった.416例のうち2例に大動脈解離が発生し,発生率は患者10,000例当たり3.1例/年(95%CI:0.5-9.5),オルムステッド郡の一般集団と比較した年齢調整相対リスク(RR)は8.4(95%CI:2.1-33.5,p = 0.003)であった.ベースライン時に50歳以上だった患者および大動脈瘤がみられた患者の大動脈解離発生率は,患者10,000例当たりそれぞれ17.4例/年(95%CI:2.9-53.6),44.9例/年(95%CI:7.5-138.5)であった.さらに未診断の二尖弁患者における大動脈解離の包括的検討により二尖弁患者における大動脈解離の発生率を推定した(患者10,000例当たり0.4-3.8例/年).ベースライン時に大動脈瘤がなかった患者384例のうち49例で追跡時に大動脈瘤が発生し,発生率は患者10,000例当たり84.9例/年(95%CI:63.3-110.9),年齢調整RRは86.2(95%CI間:65.1-114, p<0.001 vs 一般集団)であった.大動脈手術の25年間の施行率は25%(95%CI:17.2-32.8)であった.

【結論】
 平均追跡期間16年のBAV患者集団における大動脈解離の発生率は一般集団と比較して有意に高かった.

【解説】
 大動脈二尖弁は大動脈弁尖への血流の摩擦による機械的刺激が三尖よりも大きいため反応性繊維性変化や石灰化を生じやすくなり大動脈弁狭窄や大動脈弁逆流を生じやすいといわれている.
本研究は,大動脈二尖弁患者では大動脈に関しても臨床転帰に影響を及ぼすような大動脈の病的障害が発生することを示唆している.一方,大動脈二尖弁患者における大動脈解離のリスクは一般の約8倍高いにもかかわらず,大動脈解離の絶対発生率は低い.大動脈解離の発生率は,50歳を超える患者およびベースライン時に大動脈瘤がみられた患者で高い.今後は,50歳以上または大動脈瘤を合併している大動脈二尖弁患者は定期的なフォローが必要であろう.


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