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CABGにおけるグラフトの選択 [抄読会]

Second internal thoracic artery versus radial artery in coronary artery bypass grafting: a long-term, propensity score-matched follow-up study.

【背景】
 多枝血行再建術においては,内胸動脈・橈骨動脈・右胃大網動脈など様々な動脈が使用される.しかし,左内胸動脈に次ぐグラフトの選択に関しては議論が続いており,橈骨動脈・右内胸動脈のどちらが生命予後改善を得られるのか明らかになっていない.

【方法】
 多枝冠動脈疾患に対して行われた初回待機冠動脈バイパス術(CABG)1,001例の連続患者を対象とし,後ろ向きに解析を行った. 277例が両側内胸動脈を使用したバイパス術,724例が左内胸動脈と橈骨動脈を使用したバイパス術を受けていた.また, 2006年より内胸動脈のskeletonizationが開始された.一次エンドポイントは,長期の生存率・MACCE (心筋梗塞,脳卒中,心臓関連死,PCIまたはCABGの施行)生存率とした.さらにpropensity scoreによるマッチングも行った。

【結果】
 バイパス術の平均件数は両群に有意差を認めなかった.人工心肺時間,遮断時間は,両側内胸動脈群で有意に長かった. MACCE発生率は,両側内胸動脈群で1.4%,橈骨動脈群で5.7%であった(p=0.004). 5年生存率は,両側内胸動脈群で98.9%,橈骨動脈群で93% であった(p =0.054).しかし,3年後のMACCEフリー生存率は,両側内胸動脈群で95.9%,橈骨動脈群で86.4%であった(p<0.01).propensity scoreを用いると,PMI 発生率,MACCE発生率は両側内胸動脈群で有意に低かった.周術期死亡率は両群に差を認めなかった(p=0.45).術後5年生存率は,propensity scoreを用いると,両側内胸動脈群で98.9%,橈骨動脈群で93% であった(p =0.02). MACCEフリー生存率は,両側内胸動脈群では95.9%,橈骨動脈群で82.2%であった(p<0.01).

【結論】
 多枝血行再建術施行の際,左内胸動脈に次ぐグラフトは右内胸動脈である.

【解説】
 CABGに用いるグラフトの第一選択は左内胸動脈である.しかし,多枝血行再建時,その次に使用するグラフトの選択に関しては現在も議論が続いている.今回の検討では右内胸動脈を使用することによって,より高い生命予後改善効果を得ることができた.一方,両側内胸動脈使用によって,最も懸念されるのは胸骨・縦隔部の感染であるが,今回の検討における胸骨離開の発生率は両群で同等であった.よって内胸動脈採取の際pedicle harvestingでなくskeletonizationを行うことによって胸骨感染リスクが軽減される可能性がある.


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