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周術期心房細動 その6 [周術期心房細動]

3.周術期心房細動の治療

 通常,周術期心房細動は持続時間が短く,また,治療を必要としない症例も多い.しかし,心機能低下症例,心拍数が130/minを超える症例,心房細動の持続時間が24時間を超える症例,中枢神経系合併症の高リスク症例では治療が必要になる.治療法としては慢性心房細動に対する治療法と同様に洞調律維持療法,心拍数維持療法,そして抗血栓療法が挙げられる.
 周術期心房細動を発症するとatrial kickが消失するため20-30%心拍出量が低下する.心臓手術術後しばしば認められる循環動態が不安定な症例では洞調律が有利であるため,管理法として洞調律維持療法が推奨される1).洞調律への復帰にはフレカイニド,プロパフェノンが有効であるとされるが(表1),効果が得られない場合は直流徐細動を施行する2).一方,これらの処置を行っても洞調律へ復帰しない症例が散見される.慢性心房細動に対する治療法を比較検討したAFFIRM study3)においては心拍数維持療法の洞調律維持療法に対する優位性が示された.その理由として洞調律維持のための抗不整脈薬の副作用,特に心抑制を挙げている.術後心房細動においても抗不整脈薬反復使用によりさらに循環動態の悪化が進行する可能性があるため,洞調律維持が困難な症例では心拍数維持に努める.
 循環動態が安定している症例では心拍数維持療法を行う(表2).β遮断薬,Ca拮抗薬,アミオダロンを使用し,心拍数を管理する.AHA/ACC/ESCガイドライン2)では,安静時の心拍数を75/min,運動時の心拍数を90-115/minで管理することが推奨されている.周術期に関しても運動時に準じて90-115/minの心拍数で管理を行う.
 周術期心房細動発症後24時間を経過した症例,脳梗塞,一過性脳虚血の既往がある症例では心拍数維持療法に加えて抗血栓療法を併用する.70歳未満ではPT-INRを2.0-3.0で管理し,70歳以上ではPT-INRを1.6-2.6で管理する1).洞調律復帰後も心房はstunningを起こしている可能性があるため,洞調律復帰後も30日は抗血栓療法を継続する4)

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【参考文献】
1. Echahidi N et al. J Am Coll Cardiol. 51;2008:793-801
2. Fuster V et al. Circulation. 114;2006:e257-354
3. Polman CH et al. N Engl J Med. 354;2006:899-910,2006
4. Epstein AE et al. Chest 128;2005:24S-27S

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