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虚血性重症僧帽弁閉鎖不全症に対する手術法の比較 [抄読会]

Mitral-Valve Repair versus Replacement for Severe Ischemic Mitral Regurgitation

【背景】
 虚血性僧帽弁閉鎖不全症はその発症によって予後が悪化する現在最も重要な疾患の一つである.ガイドライン上は重症例に対し手術が推奨されているが,形成術と置換術のどちらかが有効であるかの結論はまだ得られていない.

【方法】
 虚血性重症僧帽弁閉鎖不全症患者(IMR) 251 例を,僧帽弁形成術(MVP)または腱索温存僧帽弁置換術(MVR)のいずれかに無作為に割り付けた.主要評価項目は,12 ヵ月時の左室収縮末期容積係数(LVESVI)とし, Wilcoxon の順位和検定によって評価した.

【結果】
 12 ヵ月時で,生存患者における平均 LVESVI は,MVP群では 54.6±25.0 mL/m2,MVR群では 60.7±31.5 mL/m2 であった.死亡率は,形成術群 14.3%,置換術群 17.6% であった(HH, 0.79; 95% CI, 0.42 to 1.47; P=0.45 by the log-rank test).死亡について補正すると,LVESVI に有意差を認めなかった(z score, 1.33; P=0.18).12 ヵ月時の中等症または重症の僧帽弁閉鎖不全症の再発率は,MVP群のほうがMVR群よりも高かった(32.6% vs 2.3%,P<0.001).12 ヵ月の時点での主要な心血管系イベントと脳血管イベントの複合発生率, QOL に有意差を認めなかった.

【結論】
 Severe IMRに対するMVP症例とMVR症例との間で,12 ヵ月時点での左室逆リモデリングおよび生存に有意差は認められなかった.MVRによって,僧帽弁閉鎖不全症のより持続的な改善がもたらされたが,臨床転帰には有意差を認めなかった.

【解説】
 IMRは梗塞後のremodelingに伴うため,梗塞部分が残存する限りremodelingが進行し,MRは悪化していく可能性がある.僧帽弁は弁単体だけでなく,その弁下組織を含めた僧帽弁複合体によって弁機能を制御しているため,MVPには限界がある可能性が高い.今後,弁逆流制御のためにはMVRまたはより根治的な逆流制御術である左室形成術の有効性を検討していく必要があろう.

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