SSブログ

非心臓手術において術前貧血が周術期予後に与える影響 [抄読会]

Preoperative anaemia and postoperative outcomes in non-cardiac surgery: a retrospective cohort study.

【背景】
 心臓手術では、術前の貧血は予後を悪化させることが知られているが,非心臓手術において術前貧血が予後に与える影響については明らかになっていない.本研究では非心臓手術において術前貧血が周術期の死亡率・合併症発症率に与える影響について検討した.

【方法】
 米国外科学会の手術の質改善プログラム(ACS NSQIP)データベースに08年に登録された非心臓手術受けた患者22万7425人(平均年齢56.4歳、57.6%が女性)を対象とした.30日死亡率と合併症罹患率,術前と周術期の危険因子を抽出した.合併症罹患については,心臓(急性心筋梗塞,心停止),呼吸器(肺炎,48時間を超える人工呼吸,予定外の挿管),中枢神経系(脳血管障害,24時間を超える昏睡),腎臓(進行性腎不全,急性腎不全),創傷(切開部深層感染,手術対象臓器の感染,創傷離開)に発生するものと、敗血症,静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症または肺塞栓症)について検討した.

【結果】
 主要エンドポイントは30日死亡,2次エンドポイントは術後30日間の合併症発症とした. 22万7425人中6万9229人(30.44%)が術前貧血とされた.軽症貧血(男性:29% < Ht <39%, 女性: 29% < Ht <36%) が5万7870人.中等症~重症貧血(Ht <29%)は1万1359人だった.術前貧血群の周術期死亡のリスクは貧血がなかった患者に比べ有意に高かった.30日死亡率は貧血なし患者が0.78%,貧血があった患者では4.61%であった(OR 1.42, 95%CI 1.31-1.54).軽症貧血患者に限定しても差は有意(OR 1.41, 95%CI 1.30-1.53),中等症~重症貧血群ではさらに顕著になった (OR 1.44, 95%CI 1.29-1.60) .周術期合併症罹患率も術前貧血群で有意に高かった(5.33% vs 15.67%; (OR 1.35, 95%CI 1.30-1.40).軽症貧血群では(OR 1.31, 95%CI 1.26-1.36),中等症~重症貧血群では(OR 1.56, 95%CI 1.47-1.66)であった.合併症に関しては中枢神経系の合併症以外貧血がすべての危険因子となった.

【結論】
 非心臓手術を受ける患者では軽症でも術前貧血が周術期死亡と周術期合併症の独立した危険因子であった.

【解説】
 以前より心臓手術では術前の貧血が予後に影響を与えることが報告されていた.今回,非心臓手術においても同様の結果が得られた.術前から貧血が認められた場合,鉄剤・エリスロポエチンなど輸血以外の方法で貧血を補正することにより予後の改善が得られる可能性がある.

共通テーマ:健康

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。